家なき子の節税策防止(平成30年度税制改正大綱より)
○はじめに
平成27年から相続税の基礎控除額の引き下げにより、年間死亡者に占める課税件数は8%にのぼっています。このため、相続税の負担は身近なものとなり、過度な節税を防止して課税の公平性を保つことが昨今重視されております。今回、いわゆる「家なき子の小規模宅地の特例」が見直されることとなりました。
○家なき子の小規模宅地の特例
相続税の小規模宅地の特例は、被相続人の住居を配偶者や同居親族が税負担を理由に手放さずに済むよう、相続税の負担を大幅に減額する特例です。この特例により、特例対象となる宅地の価額を80%も減額することができます。原則的には、配偶者又は同居親族が特例の対象者となるのですが、一定の要件を満たしていれば、別居していて持ち家がない相続人(家なき子)も対象となるのです。当初は親の死亡後、家なき子が実家に帰ってくることを想定していたのですが、この「家なき子の特例」を用いて過度な節税策が増加していたのです。
○「家なき子の特例」の問題点・見直し案
「家なき子の特例」の一要件として、相続開始前3年以内に相続人とその配偶者の持ち家に居住していないこととあります。しかし、特例を受けようとする相続人があらかじめ持ち家を子に贈与するなどして意図的に持ち家がない状態にしていた場合も特例の適用を受けることができるのです。
この節税策を防止するため、平成30年度税制改正では次の要件への改正・追加が予定されています。
・相続開始前3年以内に、自己、自己の配偶者、3親等以内の親族、関係する同族会社等の所有する家屋に居住したことがある者を除く。
・相続開始時に居住している家屋を過去に所有していた者を除く。
「家なき子の特例」は、昨今問題となっている、空き家の問題、都心への一極集中を防止する制度としても期待されています。過熱していた節税策が防止されたことで、本来の趣旨を取り戻すのではないでしょうか。
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