姻族関係終了届の効力
○姻族関係とは
婚姻は、当事者間の法律上の夫婦としての地位を発生させるだけでなく、互いに相手方の血族との間に姻族関係を発生させます。親族とされる3親等内の姻族となると、配偶者の叔父叔母・兄弟姉妹・甥姪まで含まれるので、思いがけないトラブルや義務が発生することがあります。
離婚するとこの姻族関係は終了しますが、離婚ではなく配偶者と死別した場合は、生存配偶者と死亡した配偶者の血族との姻族関係は継続します。
具体的には、夫が死亡した場合、死亡した夫と妻(生存配偶者)の血族との姻族関係は終了しますが、妻と夫の血族との姻族関係は継続します。
ちなみに複氏については姻族関係とは関係がありません。生存配偶者は姻族関係を続けながら復氏をすることもできますし、逆に復氏せずに姻族関係を終了させることもできます。
○姻族関係の終了
生存配偶者(上記例の妻)が、死亡した配偶者(夫)の血族との姻族関係を終了させるには、「姻族関係終了届」を提出する必要があります。姻族関係終了届出をする理由としては、同じ墓に入りたくない、死亡した配偶者の親の介護をしたくない、嫁姑問題に嫌気がさした、などいろいろあるようです。
この姻族関係終了届は生存配偶者のみが届出することができます。死亡した配偶者の親から届出することはできません。
○相続財産への影響
姻族関係終了届の効力は、生存配偶者(上記例の妻)と死亡した配偶者(夫)の血族との関係にのみ適用され、代襲相続には影響はありません。
具体的には、生存配偶者(上記例の妻)と死亡した配偶者(夫)との間に子があり、夫の両親が存命の場合、その後に夫の父が死亡すれば子は代襲相続人として夫の父の財産を相続する権利があります。
また、姻族関係終了届を提出した生存配偶者(上記例の妻)が、相続で取得した配偶者(夫)の財産については、相続財産は死亡した日に取得したものとされますので、相続開始時点に遡って返却する必要はありません。
○関係法令
・民法第725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
1 六親等内の血族
2 配偶者
3 三親等内の姻族
・民法第728条(離婚等による姻族関係の終了)
1 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
・民法第751条(生存配偶者の復氏等)
1 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
2 (略)
・戸籍法第96条
民法第728条第2項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
・相続税法基本通達1の3・1の4共-8(財産取得の時期の原則)
相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。
(1)相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については民法第31条《失踪の宣告の効力》に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2)贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
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