デジタル資産の相続
〇 はじめに
データとして記録されているデジタル資産の相続が新たな問題として浮上しています。 デジタル資産とは、ネットで管理する預金口座、証券口座、投資信託、保険などで FX(外国為替証拠金)、仮想通貨、電子マネーなども含まれます。 若い世代のものと思いがちですが、高齢者でデジタル資産を持つ人も増えています。 デジタル資産は、どのように引き継いだらいいのでしょうか。 また、デジタル資産を相続した場合、相続税はどうなるのでしょうか。
○ デジタル資産の問題
デジタル資産は郵送による通知などがなく、相続人がデジタル資産の存在を知らないという 問題が起きています。原則として金融機関が問い合わせることはないため、 放置されているデジタル資産が増えているとみられています。
また、被相続人がネットで金融取引をやっていたことを知っていても、利用サービスのID等が わからず、相続人がアクセスできないケースも考えられます。
特に注意が必要なのは、デジタル資産の利用料金が発生してしまうケースです。 ネット経由で契約していた投資信託を亡くなった後に解約できないと、信託報酬を払い続けること になってしまいます。
○ デジタル資産の確認方法
日頃から親がどの金融機関と取引しているかを確認することが最重要です。親子間でお金の話が しづらい場合には、エンディグノートに取引先や、アカウントのID等を書き添えておくことも デジタル資産の把握に役立ちます。
○ デジタル資産と相続税
仮想通貨の相続では、国税庁が2018年11月に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて (FAQ)」を示した。相続人はまず、引き継ぐ資産の仮想通貨の額を把握するため 「残高証明書」を仮想通貨の交換業者から取り寄せる必要があります。
残高証明書の請求方法は、交換業者によって異なりますが、コインチェックの場合は、 申請書類に記入した上で、被相続人と相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書などを送ります。 送り返された、残高証明書を確認し、内容に同意すれば代表相続人の口座に亡くなった日の レートで現金が振り込まれます。そして、相続人は交換業者からの残高証明書に基づいて 相続税の申告をすることになります。
〇 今後の展開
国税庁によると、2017年の相続税の課税価格は15.6兆円と前年より5%増えています。 相続資産の内訳では、現預金や有価証券など金融資産の割合が大きくなっています。
ネットを使った金融取引が高齢者の間で広がっており、今後デジタル資産の相続が増えることは 間違いないため、円滑に相続できるように備えておきましょう。
税法トピックの最新記事
- 被相続人の老人ホーム入居と小規模宅地等の特例
- 令和元年度の税制改正のポイント ~配偶者居住権の創設~
- 令和元年10月から相続税もe-Taxが利用可能に ~国税庁 相続税申告書の代理送信等に関するQ&Aを公表~
- 預貯金の払い戻し制度
- 医療法人の事業承継 その1~高齢化する医療機関経営者の現状~
- 平成31年の公示地価が公表されました!
- 平成31年度税制改正のポイント 【4】 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
- 平成31年度税制改正のポイント 【2】 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の特例の見直し
- 平成31年度税制改正のポイント 【1】 個人版事業承継税制の創設
- 強まる富裕層への包囲網
- 平成29事務年度における相続税の調査の状況について
- 平成29年分の相続税の申告状況を要約
- 国税不服審判所が、平成30年4〜6月分の裁決事例集No.111を公表しました。
- 相続税申告に際して失敗しないポイント
- 文科省が教育資金贈与の非課税制度恒久化を平成31年度税制改正要望で求める方針
- 遺産分割協議中に生じた相続不動産の賃料の帰属について②
- 遺産分割協議中に生じた相続不動産の賃料の帰属について①
- 宅地の評価単位
- 財産評価基本通達とは
- 預貯金を遺産分割対象とする最高裁判断の影響